人に呪いをかけることは、犯罪すなわち刑事事件になるでしょうか。
まず、犯罪が成立するためには、その行為が、犯罪行為としての定型を備えている必要があります。
つまり、たとえば殺人なら人を殺害する行為として、また脅迫なら人を畏怖させるに足りる程度の害悪を告知する行為として、刑法が要求している程度の「危険性(犯罪行為らしさ)」を備えている必要があるのです。
ところが、現代の社会通念で考えると、人に呪いをかけることには、人を死亡させる危険性や、人を畏怖させるに足りる程度の危険性が備わっていないのが通常です。
そのため、人に呪いをかけることには、刑法の要求する犯罪行為としての危険性を備えていないことが通常であるので、犯罪行為としての定型を備えていないと判断されるのが通例です。
したがって、通常は殺人罪や脅迫罪としては不可罰となるでしょう。
他方、たとえば相手に対して「お前に呪いをかけているぞ」という文言を言い続け、それによって相手をノイローゼに陥らせたとします。この場合には、無形的方法によって相手の生理的機能に障害を生じさせたものとして、傷害罪が成立する可能性があります。