公務員には、職務を遂行する上で犯罪(刑事事件)があることを知ったときは、通報しなければなりません。
では、刑事弁護士の場合は、犯罪を通報する義務はあるでしょうか。
刑事弁護士には、職務を遂行する上で被疑者・被告人に余罪(別件の刑事事件)があることを知ったとしても、それを他人に漏らすことはできません。
「通報しなくてよい」ではなく、「漏らしてはならない」のです。
これは、弁護士に課せられた守秘義務によるものです。
守秘義務があることによって、依頼者は他人に言いたくないような事実であっても、弁護士に対して話すのであれば、外部に漏れる心配がないからということで、安心して打ち明けることができます。
そうして事実をもれなく聴取できることで、弁護士は最善の弁護をできるようになります。
その結果、依頼者も最善の弁護を受けられることで、自分の利益が最大に実現されるようになるのです。
このように、守秘義務は、依頼者と弁護人との間の信頼関係を築き、維持する上で、非常に重要な意味を持っています。
そのため、守秘義務を上回る義務として通報義務が課されることは、あり得ないのです。