目次
- Q 強制わいせつになるのはどのような場合ですか?どんな刑罰になりますか?
- Q 強姦罪の刑罰はどのくらい重いのでしょうか?
- Q 泥酔中の女性や小中学生の女子と関係を持つ行為はどんな犯罪ですか?
- Q 強制わいせつの場合、刑務所に入ることになってしまうのでしょうか?
- Q 強姦の場合は、刑務所に入らなければいけませんか?
- Q わいせつ事件で、起訴される前に示談するメリットを教えてください。
- Q わいせつ事件の示談のために弁護士を付ける必要はありますか?
- Q わいせつ事件の示談金はどのくらい用意すればいいですか?
- Q 強制わいせつが発覚すると、逮捕されますか?
- Q 強制わいせつで捕まってしまいました。私はいつ釈放されますか?
- Q わいせつ事件の保釈金はいくら位になりますか?
- Q 強制わいせつや強姦で捕まったことは、職場に知られてしまいますか?
Q 強制わいせつになるのはどのような場合ですか?どんな刑罰になりますか?
強制わいせつ罪(刑法176条)に該当するのは、13歳以上の男女に暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした場合と、13歳未満の男女にわいせつな行為をした場合(暴行・脅迫は不要)です。
「わいせつな行為」の具体例としては、陰部に手で触れたり、指で弄んだりする行為や、自分の陰部を押し当てる行為、女性の乳房を弄ぶ行為などが挙げられます。電車などでの痴漢行為も、下着の中に手を入れるような強い態様のものは強制わいせつ罪に当たることがあります。
強制わいせつ罪の法定刑は、「6月以上10年以下の懲役」と定められており、強制わいせつの際に被害者を死傷させると、「無期または3年以上の懲役」に加重されます。強制わいせつ致死傷罪は、裁判員裁判対象事件となる重大犯罪に位置付けられます。
Q 強姦罪の刑罰はどのくらい重いのでしょうか?
強姦罪は、暴行または脅迫を用いて女子を姦淫した場合と、13歳未満の女子を姦淫した場合(暴行・脅迫は不要)に成立し、その法定刑は3年以上の有期懲役(20年以下)と定められています。そして、強姦の際に被害者を死傷させた場合は、無期又は5年以上の懲役に加重されます。
また、二人以上の者が共同して強姦した場合、集団強姦罪が成立し、4年以上の有期懲役(20年以下)に処せられます。そして、死傷結果が生じると無期又は6年以上の懲役に加重されます。被害者を死傷させた場合には、裁判員裁判対象事件になります。
Q 泥酔中の女性や小中学生の女子と関係を持つ行為はどんな犯罪ですか?
睡眠や酩酊などで抵抗できない人にわいせつな行為をする行為は準強制わいせつ罪に当たり、同様に抵抗できない女性を姦淫するのは準強姦罪に当たります(刑法178条)。したがって、酔い潰れてしまった人と関係を持つことは、準強姦として強姦の罪に問われる可能性があります。
また、強制わいせつ罪や強姦罪は、相手が13歳未満である場合その同意があっても成立します。したがって、関係を持った相手が13歳未満であれば、同意の有無に関わらず強姦罪に該当することになります。もし相手の女性から執拗に性行為を迫られたとしても、女性が13歳未満であれば強姦罪は成立してしまいます。
Q 強制わいせつの場合、刑務所に入ることになってしまうのでしょうか?
捜査機関に犯罪の事実を告げて犯人の訴追を求めることを告訴といいます。そして、強制わいせつ罪は、この告訴がなければ検察官が起訴できない親告罪とされています。
そのため、相手が告訴しなかった場合や、告訴したものの示談が成立して告訴を取り消した場合には、起訴される余地がないので刑務所に入ることはありません。
もっとも、強制わいせつ致死傷罪や強姦致死傷罪は親告罪でないため、被害者を死傷させた場合には当てはまりません。
また、起訴されてしまった場合でも、裁判で示談等が評価されて執行猶予付きの判決が得られれば、刑務所に入ることにはなりません。裁判が終わったあとは、そのまま自宅に帰宅することができます。
Q 強姦の場合は、刑務所に入らなければいけませんか?
強姦罪(強姦致死傷罪、集団強姦罪を除く)も親告罪ですので、告訴がない場合や示談の成立により告訴が取り消された場合には、当然、刑務所に入ることはありません。
もっとも、強姦罪は性犯罪の中でも罪質の重い罪なので、起訴された場合には初犯であっても実刑判決になることが少なくありません。
とはいえ、被害者の処罰を望まないという許しの意向は判決に大きな影響を及ぼし、執行猶予を獲得する要因になり得ますので、起訴された後であっても示談を成立させる意味は大きいものがあります。
わいせつ事件が起訴され刑事裁判になった場合は、判決に執行猶予が付くかが分かれ目です。判決に執行猶予が付けば、直ちに刑務所に行く必要はないので、そのまま裁判所から自宅に帰宅することができます。
Q わいせつ事件で、起訴される前に示談するメリットを教えてください。
強制わいせつや強姦事件は、起訴前の示談の結果が被疑者の利益に極めて強く影響する事件類型です。
親告罪である強制わいせつ罪・強姦罪では、示談によって告訴が取り消されれば起訴される可能性はゼロになりますし、親告罪でない集団強姦罪や強姦致死傷罪などでも、示談が成立すると不起訴処分になるのが通常です。
特に、刑事裁判を望まないという被害者の意思が示談で明らかになっていれば、起訴されることは考えにくいでしょう。
一方で、示談が成立しなかった場合、起訴されると正式裁判になり公開の法廷で事件が審理されます。簡易な手続で罰金を納める略式手続は採用の余地がないため、公判になった場合の負担は避けられません。
また、審理の結果実刑判決となれば、相当期間刑務所に入らなくてはいけません。示談が成立して不起訴となればこれらのリスクは一切なくなりますから、示談のメリットは極めて大きいと言えるでしょう。
当然、わいせつ事件での示談でも通常の示談の場合と同様、示談が成立した後の追加の賠償請求は拒否することができますし、告訴の取り消しを含む示談の成立をもって、ご相談者のわいせつ事件は刑事的にも民事的にもすべて解決したということができます。
Q わいせつ事件の示談のために弁護士を付ける必要はありますか?
強制わいせつや強姦の被害者は心身に重大なダメージを受けており、特に強姦の場合は加害者に強い処罰感情を持っているケースが珍しくありません。そのため、被害者が加害者との接触を一切拒否している場合には、弁護士を付けなければ示談できず、弁護士の存在が必要になります。
もちろん、弁護士との接触も拒まれるケースはありますが、ご自身で活動するより示談成立の可能性が高くなることは間違いないでしょう。
また、不起訴処分や執行猶予を目指すためには、被害者の許し(宥恕)や告訴の取消しなど、示談の内容に含むべき事項があります。それらを踏まえた適切な内容の示談を成立させるには、弁護士が必要になることが多いでしょう。
弁護士を付けるメリットとしては、他にも、示談のために仕事を休む必要がないという点、性犯罪の被害者と面会するという被害者側にもストレスフルな活動を弁護士にすべて任せることが可能という点などが挙げられます。
Q わいせつ事件の示談金はどのくらい用意すればいいですか?
示談金の額は当事者の合意で決定されますが、事案の内容や被害感情の程度、加害者の立場などにより大きく異なります。
強制わいせつの場合、被害の大きくない事件では10~50万円程度であることが多く見られますが、被害者の精神的ダメージが大きいケースや行為が悪質なケースでは、100万円を超える示談金での合意も少なくありません。
強姦の場合、風俗サービス中のトラブルで10~50万円程度での示談が成立するケースも見受けられますが、悪質なケースでは100~500万円の示談金を支払うこともあります。
また、逮捕・勾留されている場合は、早期に示談を成立させる必要があることから、示談金額が高額になりやすい傾向にあります。
示談交渉に慣れた弁護士を立てて対応すれば、相手方と示談金を安く抑えるための話し合いを行うことができます。捜査段階で示談がまとめることは、将来の刑事裁判や民事裁判の負担がなくなるという点で、被害者側にとっても大きなメリットがあります。
Q 強制わいせつが発覚すると、逮捕されますか?
強制わいせつトラブルの場合、逮捕される事件も逮捕されない事件もありますが、確かな証拠がある、起訴すべき事件である、などのケースでは逮捕されることが多いようです。
このような場合、トラブルの現場で現行犯逮捕されるケースもあれば、後日になって被害者が警察に駆け込んだのをきっかけに通常逮捕されることもあります。
逮捕された場合、捜査機関は事件を重く捉えていることが多いため、適切な弁護活動を早期に開始する必要があると言えるでしょう。
なお、警察が未介入の事件、または介入して間もない事件であれば、被害者と示談することで、逮捕を防ぐことが可能です。示談で告訴意思がないことを確認すれば、親告罪では逮捕される可能性がゼロになります。
Q 強制わいせつで捕まってしまいました。私はいつ釈放されますか?
逮捕されると、3日以内に勾留を行うかどうか判断されます。勾留は10日間なされ、さらに10日間延長する可能性があるので、逮捕から最長23日間の身体拘束になります。
その間に検察が起訴するか否かの判断を行い、起訴されれば引き続き勾留されることになります。強制わいせつ事件の場合、逮捕からの身体拘束が23日間にわたるケースも少なくありません。
もっとも、その間に示談が成立して告訴の取消しがあれば、起訴の余地がなくなるため速やかに留置場から釈放されます。また、捜査段階での示談が奏功せず起訴された場合でも、保釈が認められれば起訴から数日で釈放してもらうことが可能です。
釈放後は、基本的には、今までどおりの生活が可能です。わいせつ事件が未解決であっても、取り調べや裁判のために呼び出された特定の日にだけ出頭すれば大丈夫です。
Q わいせつ事件の保釈金はいくら位になりますか?
保釈は、保釈保証金(いわゆる保釈金)の納付と引き替えに釈放してもらう手続をいい、起訴された後に求めることができます。
保釈金の額は被告人の財産状況などによって大きく左右されますが、一般論として、強制わいせつ事件の場合は200万円程度、強姦罪の場合は300万円程度になることが多いようです。
保釈金は、約束を守らなければ没取される、という心理的強制によって裁判への出頭を確保するためのものですから、裁判が終わった後に全額返還されます。ただし、逃亡や保釈条件の違反といった理由で没取されてしまった場合は、返還してもらうことができません。
保釈中は、保釈の条件に違反しない限り、職場や学校に通うのは自由に行うことができますし、携帯電話やパソコンの使用も自由です。保釈中でも特に問題なく、通常の日常生活を送ることができます。
Q 強制わいせつや強姦で捕まったことは、職場に知られてしまいますか?
職場内での犯行である場合や職場の方が被害者である場合は、警察から職場に対して事件の情報が伝えられてしまうことも考えられます。
もっとも、職場と関係のない事件については、警察から直ちに職場へ連絡されるというわけではありません。職場とは無関係の事件の場合、基本的には、警察から会社に連絡がいくことはないと考えて差し支えないでしょう。
特に、強制わいせつ事件で比較的被害が軽微な部類のものは、示談を成立させて速やかな釈放を実現することにより、職場に事件が発覚することなく仕事に復帰することも可能です。
会社に事件のことを知られてしまう一番のパターンは、逮捕勾留が長引いて会社に言い訳ができなくなるというケースですので、会社に事件のことを知られたくないという場合は、釈放活動に慣れた弁護士を付ける等、1日でも早く留置場から釈放されるように動くことが大切です。