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Q 万引きや置き引きをしてしまった場合、どんな刑罰になりますか?
万引きや置き引きは窃盗罪(刑法235条)に該当し、その法定刑は「10年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」です。もっとも、初犯の場合や事件が軽微な場合には、刑罰を受けずに事件が終了することが多くあります。
まず、警察が検察官に送致することなく事件を終了させるという判断をした場合、警察の捜査のみで事件が終了します。これを微罪処分といいます(刑事訴訟法246条ただし書)。
次に、検察官に送致された場合でも、起訴する必要がないと検察官が判断した場合、不起訴で事件が終了します。これを起訴猶予といいます。
また、前科、余罪や常習性などが認められることから起訴される事件もありますが、通常の万引きで起訴されたとしても、略式手続という簡易な手続で罰金刑になることがほとんどです。略式手続の場合、法廷で尋問などを受けることはありませんし、手続の内容が一般に公開されることもありません。
Q 刑罰を受けないようにするために、どうすればいいでしょうか?
窃盗罪の場合、経済的な損失を被った被害者がいますから、その被害者との間で示談を成立させ、当事者間のトラブルを解決することが有益です。示談によって、トラブルの解決を約束し、被害者の許し(宥恕)を得ることができれば、起訴されず事件が終了する可能性は高くなります。
起訴されなければ、ご相談者に前科が付くことはないので、今までどおりの生活を取り戻せることが多いです。
Q 万引きや置き引きの場合の示談金は、いくらが相場でしょうか?
窃盗における示談金は、被害者の損失に対する被害弁償を含むものになりますので、被害金額によって変動します。
一般的な万引きの事件では、被害金額を基準とした相当額をお店に支払うことが多いようです。一般の方に対する置き引きも被害金額を考慮しますが、被害感情への配慮から一定額を上乗せした金額で合意するケースが多くあります。
もっとも、弁護士の交渉などによって被害者の合意が得られれば、示談金を低額に抑えることが可能なケースもあります。
Q お店が、示談に取り合ってくれません。どうにかすることはできませんか?
相手の店が大きな会社に属しているようなケースでは、示談には一切応じられないという対応を取られることもあります。このような場合、被害者である店側と示談を成立させることは困難です。
もっとも、弁護士が交渉をすることで、会社本体とは示談ができなくても、店舗の責任者が個人的に「加害者を許す」との内容の書面に署名をしてくれる場合があります。宥恕されていれば、少なくとも店側に処罰意思がないことを前提とした処分をするよう求めていくことができます。
Q 示談のとき、弁護士にお願いした方がいいですか?
万引きや置き引きの性質上、被害者の連絡先を知らないケースが多いと思いますが、加害者に直接連絡先を知られることを拒む方も少なくありません。その場合、弁護士が付けば、捜査機関が被害者の方の承諾を得て弁護士に限り相手方の連絡先を教えてくれる可能性があります。
また、被害者の方に処罰意思がないだけでなく、被害届も取り下げてもらえるのか、告訴はどうか、いつ宥恕が得られるか、などの事情を考慮した上で、適切なタイミングで適切な内容の示談が締結できることも、弁護士を付ける大きなメリットです。
こういった点を踏まえると、弁護士に依頼される方がより円滑な事件解決を実現しやすいと言えるでしょう。
Q お店の商品を万引きしてしまいました。逮捕されますか?
万引きが発覚した場合、逮捕されるケースもありますが、必ずしも逮捕されてしまうわけではありません。警察への出頭が確保できる、証拠隠滅の危険がないなど、身体を拘束する必要まではないという場合は、逮捕されず在宅事件として捜査されることもあります。
軽微な万引き事件で、過去に同種事件で裁判を受けたことがなく、身元や証拠がはっきりしているケースであれば、自宅で生活しながら警察や検察に呼ばれた際に捜査に応じることになる可能性は高いと考えられます。
もっとも、現行犯逮捕を免れても、証拠関係次第では、後日逮捕される可能性も残っています。後日逮捕が心配な場合は、一度弁護士に事件を相談してみましょう。弁護士は守秘義務を負っており、相談内容を警察に密告することは絶対にないので、安心して相談することができます。
Q 万引きはいつ時効になりますか?時効とは具体的にどういうものですか?
一般にいう時効とは、時効期間が経過した後に検察官が起訴できなくなってしまうもので、公訴時効といいます。公訴時効の期間はその犯罪の法定刑(法律に定められている刑罰内容)によって異なり、法定刑が重い犯罪であるほど公訴時効の期間は長くなります。
万引きは窃盗罪に当たり、窃盗罪は長期10年の懲役刑が定められているため、公訴時効は7年です(刑事訴訟法250条2項4号)。したがって、犯罪行為が終わってから7年経過した時点で公訴時効が成立します。
Q 被害者と示談したのですが、後から慰謝料を求められることはありますか?
示談には、謝罪と賠償をすることで当事者間のトラブルが一切解決されたことを確認する清算条項を設けるのが通常です。清算条項を設けて示談をすれば、当事者の間で示談内容以外の債権債務関係が生じないことになりますから、後になって相手から慰謝料などを求められても、示談がすでに成立していることを理由に、金銭の支払いを拒むことができます。
Q 万引きの執行猶予中にまた万引きをしてしまいました。刑務所行きですか?
執行猶予期間中に再度罪を犯してしまった場合、実刑判決が言い渡され、前に言い渡された執行猶予も取り消されてしまい、両方の犯罪について刑罰を受けることになるのが通常です。
もっとも、再犯防止の策が講じられている、被害者と示談が成立し減刑の嘆願書が得られている、犯罪の態様が悪質でない、などの事情から、特に情状酌量すべき場合には再度の執行猶予を得ることが可能です。再度の執行猶予になれば、刑務所に入る必要はゼロです。
万引きは、再度の執行猶予が比較的認められやすい事件類型といえます。弊所でも、過去数回、万引き事案で再度の執行猶予判決を得た実例があります。再度の執行猶予が得られた場合は、前の執行猶予も取り消されませんから、刑務所に入ることなく社会復帰できます。また、判決時に勾留されていても、判決が言い渡された後、そのまますぐ自宅に帰ることができます。