目次
- Q 詐欺罪とはどのような犯罪ですか?
- Q 詐欺罪の特徴を教えてください。
- Q 特殊詐欺とは何ですか?どんなものがありますか?
- Q オレオレ詐欺の被害者からお金を受け取るバイトはどんな罪になりますか?
- Q 組織的な詐欺はより重い犯罪になると聞きました。どういうことですか?
- Q 被害者が振り込んだお金をATMから引き出した場合はどうですか?
- Q オレオレ詐欺に関与すると、どんな刑罰を受けることになるのでしょうか?
- Q オレオレ詐欺に協力してしまいました。逮捕されますか?
- Q オレオレ詐欺で逮捕されてしまいました。いつ釈放されますか?
- Q 勾留が終わった後にまた逮捕され、釈放されません。どうしてですか?
- Q 保釈金を積むので保釈してもらいたいです。問題はありますか?
- Q オレオレ詐欺で捕まると、詐欺罪の前科がついてしまいますか?
- Q オレオレ詐欺で捕まりました。刑務所に入らずに済む方法はありますか?
- Q 被害弁償に必要なお金を集められないのですが、示談できますか?
- Q 詐欺のお金を200万円引き出し、10万円の報酬を得ました。被害弁償は?
Q 詐欺罪とはどのような犯罪ですか?
人を騙して、お金などの財物を交付させる犯罪です。刑法により10年以下の懲役に処せられます。
Q 詐欺罪の特徴を教えてください。
詐欺罪の特徴は、罰金刑がないという点です。そのため、事件が起訴されると必ず正式裁判になるので、傍聴人に見られながら刑事裁判を受けなければなりません。
罰金刑が規定されている窃盗罪だと、起訴されても略式手続きで終わることがありますが、詐欺罪だとそうはいきません。
Q 特殊詐欺とは何ですか?どんなものがありますか?
特殊詐欺とは、電話やメールなどを用いて対面することなく相手を騙し、振り込みなどの方法で不特定多数の被害者から金銭を受け取る犯罪を指します。代表的なものとしては、振り込め詐欺(オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金詐欺)があります。
他にも、未公開株など金融商品取引名目の詐欺、ギャンブル必勝法提供名目の詐欺、異性交際あっせん名目の詐欺が挙げられます。
Q オレオレ詐欺の被害者からお金を受け取るバイトはどんな罪になりますか?
オレオレ詐欺のうち、被害者の方にお金を振り込ませるのではなく持参させて現金を受け取るケースで、実際にお金を受け取る役割を果たす人を受け子といいます。そして、詐欺集団の一人として受け取りを担当した受け子の行為には詐欺罪の共同正犯が成立します。
法律に定められている刑罰の内容・程度を法定刑といいますが、詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役と定められています(刑法246条1項)。複数の事件に関与し、併合罪となれば、より重たく処罰される可能性が高いです。
Q 組織的な詐欺はより重い犯罪になると聞きました。どういうことですか?
組織的詐欺の場合、組織犯罪処罰法上の詐欺罪が成立し、より重い犯罪になることがあります。同法では、詐欺が団体の意思決定によって行われ、詐欺の利益がその団体に帰属する場合に、1年以上20年以下の懲役の法定刑になることが定められています(3条1項13号)。
もっとも、受け子のような末端の立場にある人が同法の罪に問われることはあまりありません。組織の主犯格に対して適用され、より重い罪責を負わせる例が主に見受けられます。
Q 被害者が振り込んだお金をATMから引き出した場合はどうですか?
被害者に特定の口座へお金を振り込ませるオレオレ詐欺では、出し子と呼ばれる人がATMから金銭を引き出して、お金を奪うことになります。
この出し子の行為には窃盗罪が成立し、その刑は「10年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」と定められています(刑法235条)。
ただ、実際は罰金刑になったケースは聞いたことがなく、振り込め詐欺の社会的予防の意味を込めて、刑事裁判で懲役刑になるケースがほとんどです。初犯で犯情が軽ければ執行猶予が付いて刑務所に入らないで済むケースもありますが、初犯でも実刑になるケースもあります。
Q オレオレ詐欺に関与すると、どんな刑罰を受けることになるのでしょうか?
オレオレ詐欺への関与としては、受け子、出し子や、被害者に電話をするかけ子の役割を果たす場合が考えられます。このうち、単純な窃盗罪だけで起訴されやすい出し子の場合は執行猶予付き判決になって社会復帰できるケースもよく見られます。
しかし、オレオレ詐欺事件は実刑判決で刑務所に入るケースが多く、詐欺の共犯になる受け子は2~3年程度の実刑判決になることも少なくありません。より積極的に被害者を騙すかけ子の場合は、初犯でも相当期間の実刑判決になることを覚悟した方がいいかもしれません。
もっとも、直接的に詐欺に関与したとしても、執行猶予が絶対に無理というわけではありません。過去、弊所で実際に取り扱ったケースでも、被害弁償や示談を充実させたことで、相手をだます電話係を担当したが執行猶予になった、新聞報道で数千万円の被害と報道されたが執行猶予になったケースなど、当初は実刑が予想されたが逆転判決で刑務所に行かずに済んだクライアントが多くいます。大切なのは、最後まで諦めないことです。
Q オレオレ詐欺に協力してしまいました。逮捕されますか?
オレオレ詐欺は重大な組織的犯罪であることが多いため、被疑者を逮捕して捜査を行うのが通常です。自宅で生活しながら、警察や検察の呼び出しに応じる方法で捜査が進む事件を在宅事件といいますが、オレオレ詐欺の事件が在宅事件になることは通常ありません。
もっとも、逮捕状が発付できない場合は別です。オレオレ詐欺で逮捕されるのは、通常、現行犯逮捕ではなく後日逮捕です。逮捕には裁判官が発付する逮捕状が必要になりますが、そのための証拠が十分でない場合は逮捕されないということも十分に考えられます。もし警察から呼び出しを受けた場合は、事前に弁護士に相談し、今後の方向性を固めておくのが良いと思います。
Q オレオレ詐欺で逮捕されてしまいました。いつ釈放されますか?
逮捕されると、通常その翌日か翌々日に検察に連れて行かれた上で、逮捕から3日以内に、釈放するか、それとも勾留請求して身体拘束を継続するかが判断されます。オレオレ詐欺のような重大事件では、勾留され、逮捕から最長23日間の身体拘束がなされた上、起訴されることが一般的です。
起訴されると、それまでの被疑者勾留が被告人勾留に切り替えられ、2か月の身体拘束が継続することになります。その後も、被告人勾留は1か月ごとに更新されることがあります。起訴後は保釈が認められれば釈放されることが可能ですが、組織的な詐欺事件の場合は、証拠隠滅を防ぐなどの目的から保釈が認められない可能性が高いです。
一方で、事件が起訴されず不起訴処分もしくは処分保留で勾留の満期日を迎えると、勾留の効力がなくなるため、そのまま留置場から釈放され、別件で再逮捕されない限り、自宅に帰ることができます。問題は再逮捕の有無ですが、被害者の数が多く証拠が固い場合は、何度か再逮捕されるのが一般的です。
Q 勾留が終わった後にまた逮捕され、釈放されません。どうしてですか?
オレオレ詐欺のように組織的犯罪で余罪が多い事件では、複数の余罪について証拠を集めたり、事件の全容を明らかにしたりするために、別の事件での逮捕・勾留が繰り返されるケースが少なくありません。
重大事件であるオレオレ詐欺の事件では、逮捕や勾留を防いで釈放されることは非常に難しいので、逮捕・勾留の繰り返しがなされると身体拘束期間が非常に長くなります。
最長23日間の逮捕・勾留が5~6回繰り返されることは珍しくなく、身体拘束が1~2年にわたるケースもあります。
このような場合にいつ釈放されるかは一概に言えず、捜査の進捗状況などによって大きく左右されますので、具体的な見通しについては弁護士に相談するのがよいでしょう。オレオレ詐欺の弁護経験が豊かな弁護士に相談すれば、今後の事件の見込みについて詳細を知ることができ、不安の解消に役立ちます。
Q 保釈金を積むので保釈してもらいたいです。問題はありますか?
起訴された後は、保釈金と引き替えに釈放してもらえる場合があります。この保釈金は一時的に納付するもので、逃亡などによって没取されなければ裁判の後に返還されるものです。オレオレ詐欺では保釈が認められないケースが多いですが、確率は低いとはいえ保釈が認められたケースもあります。
もっとも、オレオレ詐欺事件では、数百万円から場合によっては一千万円を超える高額な示談金が必要になる場合も多いです。そのため、保釈金を捻出したために示談金が一時的に用意できず、示談が成立しなかった結果実刑判決になってしまう恐れもあります。実刑判決が出れば、短期間の保釈を急いだために長期間の刑務所生活を強いられる結果になるわけです。
そこで、執行猶予の可能性はあるが示談金の原資に限りがある、というような場合には、示談を優先させるためあえて保釈を求めないということも考慮した上で、保釈金の支払いを決めるべきです。
大切なのは、一時的な釈放ではなく、最終的に執行猶予で釈放され、今までどおりの暮らしを取り戻せるかという観点だと思います。
Q オレオレ詐欺で捕まると、詐欺罪の前科がついてしまいますか?
前科とは、一般に有罪判決の言い渡しを受けた事実をいいます。そして、起訴された事件はほとんどが有罪になりますので、前科を回避するためには検察の不起訴処分を目指すことになります。
この点、ご相談者様が明らかに詐欺に関与していない場合や、検察官が犯罪を立証できない場合には、嫌疑なしまたは嫌疑不十分として不起訴になります。また、犯罪の立証が可能な場合でも、検察官の裁量で不起訴処分になることがあり、これを起訴猶予といいます。不起訴になれば、詐欺罪の前科は付かないので、前科なしで社会復帰を果たすことが可能です。
もっとも、社会的に大きな問題とされているオレオレ詐欺の事件で起訴猶予になることは通常考えにくいので、確かな証拠があれば起訴され前科がついてしまうものと考えた方がよいでしょう。
Q オレオレ詐欺で捕まりました。刑務所に入らずに済む方法はありますか?
起訴され正式裁判になったとしても、執行猶予付き判決を得ることができれば刑務所に入る必要はありません。
もっとも、大規模な組織的犯罪であることの多いオレオレ詐欺の事件では、執行猶予を得るのが厳しいケースは少なくありません。厳罰傾向のあるオレオレ詐欺の場合、実刑判決を覚悟するべき場合は多いでしょう。
一方、執行猶予の可能性が見込まれる事件では、被害者と示談を成立させて被害者の許し(宥恕)を得ること、共犯者間での役割や寄与度が相対的に低いとの主張をすることなどが、執行猶予を勝ち取るため有益な活動になります。執行猶予判決の場合は、勾留中でも判決後すぐに自宅に帰れます。
Q 被害弁償に必要なお金を集められないのですが、示談できますか?
オレオレ詐欺は被害規模が大きくなりやすいため、受け子や出し子のような立場の人が被害弁償をしようと思っても、莫大な額の被害弁償に足りる金銭を用意できないことがあります。
このような場合、十分な被害弁償ができるケースに比べて示談が成立しにくいことは否定できませんが、必ずしも示談できないというわけではありません。
交渉の結果被害者の合意を得ることができれば、用意できる限りでの金銭を各被害者に案分して支払うなどの方法で、示談を成立させることは可能です。被害全額の弁償ができていない場合でも、被害者の宥恕があれば執行猶予の可能性は高くなります。
Q 詐欺のお金を200万円引き出し、10万円の報酬を得ました。被害弁償は?
末端の立場にある出し子の場合、被害金額に比べて受け取った報酬は非常に低額になります。とすると、詐欺による利益の中で出し子の人が得たものはごくわずかであると評価されうるので、被害弁償して示談を目指す場合、被害全額を弁償することが常に出し子の人にとって最善であるとは言えません。
合計数十万円の被害弁償であっても、事情を説明して誠意を見せれば示談の合意は可能ですし、その内容の示談があれば執行猶予になる見込みは同様に高まります。目指す結果や事案の内容によって合理的な示談金額は変動しますので、具体的な示談金の検討は弁護士と相談して行うのがよいでしょう。