目次
- Q 人身事故を起こした後に怖くて逃げました。どんな犯罪になりますか?
- Q 物損事故を起こした後に怖くて逃げました。どんな犯罪になりますか?
- Q 飲酒事故を起こした後に怖くて逃げました。どんな犯罪になりますか?
- Q ひき逃げをしてしまいました。警察に見つかると逮捕されますか?
- Q ひき逃げ事件で逮捕されてしまいました。いつ釈放してもらえるでしょうか?
- Q ひき逃げをしてしまった場合、刑務所に入ることになるのでしょうか?
- Q ひき逃げ事件で執行猶予を得るには、どうすればよいですか?
- Q ひき逃げで示談するために、示談金はいくら必要ですか?
- Q 示談をするのに弁護士を付けるメリットはありますか?
- Q 示談は弁護士に任せてしまうべきですか?一緒に行くべきですか?
- Q ひき逃げをしてしまった場合、免許取消しの処分を受けますか?
- Q ひき逃げが不起訴になりました。免許取消しを回避することはできますか?
Q 人身事故を起こした後に怖くて逃げました。どんな犯罪になりますか?
一般的な人身事故の場合、事故そのものは自動車運転死傷行為処罰法上の過失運転致傷罪(5条)に該当します。そして、人身事故を起こしてしまった車両の運転者は、道路交通法上直ちに負傷者を救護するなどの措置を講じる義務を負うことになります(72条1項)。
人身事故後のひき逃げ行為は、この救護義務違反(及び報告義務違反)に該当し、「10年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」の対象になります(117条2項)。2つの罪は併合罪という関係に立つため、両方成立する場合には刑罰の上限が15年の懲役に加重されます。
Q 物損事故を起こした後に怖くて逃げました。どんな犯罪になりますか?
物損事故も道路交通法上の交通事故に当たるので(67条2項)、運転者は事故状況などを警察に報告する義務を負います(72条1項)。そのため、物損事故を起こしてそのまま逃げてしまう当て逃げ行為は、報告義務違反に該当し、「(1か月以上)3か月以下の懲役」または「5万円以下の罰金」の対象になります(119条1項10号)。
なお、道路交通法上の交通事故は道路で発生したものを指すとされていますが、公道だけでなく、私有地であっても不特定の人や車が自由に通行できる状態になっている場所は道路に該当すると考えられています。
そのため、店の駐車場で物損事故を起こして逃げたような場合でも、報告義務違反に当たる可能性があります。
Q 飲酒事故を起こした後に怖くて逃げました。どんな犯罪になりますか?
飲酒運転の影響で交通事故を起こした場合に、飲酒運転の発覚を免れるためにその場を逃げる行為は、自動車運転死傷行為処罰法上の発覚免脱罪(4条)に当たる犯罪行為です。
これは、アルコールが検出されない状態になるまで逃げた後で出頭した人には危険運転致死傷罪の責任を問うことができないため、事故直後に出頭した人より軽い罪になってしまう、という逃げ得の問題を解消するために設けられた犯罪です。
発覚免脱罪は、法定刑が「12年以下の懲役」という重大な犯罪です。
Q ひき逃げをしてしまいました。警察に見つかると逮捕されますか?
ひき逃げ事件では、一度事件現場から逃げてしまっているので、逃亡を防ぐために逮捕されてしまうケースが多いです。逮捕されると、3日以内に勾留するかが判断されますが、やはり逃亡を防ぐために勾留され、逮捕から23日の間身体拘束される可能性が高いでしょう。
そして、ひき逃げ事故は、通常の交通事故より重大な犯罪とされるため、起訴されて正式裁判になるケースが多く見られます。起訴されるとさらに2か月間勾留され、その後1か月ごとに勾留が更新される可能性もありますが、保釈が認められれば釈放されます。
Q ひき逃げ事件で逮捕されてしまいました。いつ釈放してもらえるでしょうか?
ひき逃げ事件では、逮捕・勾留という起訴前の段階では釈放されることが難しいケースが多いです。そのため、ひき逃げで逮捕されたケースでは、起訴後の保釈による釈放を目指すことが多くなります。
事件を認めて正直に話していること、警察が証拠を全て確保していること、しっかりとした身元引受人がいるため逃亡が考えられないことなどが認められる場合に、保釈される可能性は高くなります。
速やかに保釈請求を行い保釈が認められれば、起訴から3日程度で釈放してもらうことができます。保釈中は、基本的に生活は自由で、保釈の条件に違反しない限り、職場や学校への復帰も可能です。
Q ひき逃げをしてしまった場合、刑務所に入ることになるのでしょうか?
ひき逃げ事件は、多くの場合公判請求され、正式裁判が行われることになります。そのため、事件を立証できるだけの証拠がないようなケースを除き、有罪の判決が言い渡されることになる見込みが大きいです。
しかし、必ずしも刑務所に入ることになるわけではありません。被害者が負った傷害の程度が重くなければ、被害者との示談を行うことなどで執行猶予付きの判決が得られる可能性が高く、判決に執行猶予が付けば刑務所に入らず社会生活に復帰することができます。
Q ひき逃げ事件で執行猶予を得るには、どうすればよいですか?
ひき逃げ事件は被害者がいる犯罪です。身体的・経済的な損害を被った上、加害者に逃げられた被害者の処罰感情は、裁判の結果に大きな影響を及ぼします。裏を返せば、被害者との間で示談を成立させて被害者の許し(宥恕)を得ることで、執行猶予になる可能性がかなり高くなります。
他に、内省を深め反省していることや更生環境の充実を示すことも有益ですが、被害者との示談成立を目指すのが最も重要な活動になるでしょう。
Q ひき逃げで示談するために、示談金はいくら必要ですか?
示談は、当事者間の合意でトラブルを解決するものですので、示談金も当事者の合意した金額になります。示談金の金額は、加害者の資力や被害者の感情によって上下することがあります。また、弁護士が交渉することによって示談金額を低く抑えることが可能な場合もあります。
もっとも、ひき逃げを含む交通事故トラブルの場合、民事上被害者に生じる損害の金額を定型的に算出する運用がなされています。そのため、示談においても、算出された損害額を基準に示談金額を設定することが多く、算出額が示談金の目安になると言えるでしょう。
なお、保険金で損害が補填される場合、保険金が出るまでに被害者が支出しなければならない費用の相当額を一時金として支払うことも考えられます。
Q 示談をするのに弁護士を付けるメリットはありますか?
必要十分な条項を設けて当事者間で合意できるのであれば、示談に弁護士が付く必要は必ずしもありません。また、交通事故の場合は、保険会社の担当者が弁護士に代わり示談を代理することも多いでしょう。もっとも、被害者の症状固定のタイミングが遅いような場合には、保険会社だと示談金額の合意がいつまで経ってもできない可能性があります。
そのようなケースでは、弁護士が適切な一定額の示談金・解決金を提案するなどの交渉をすることで、損害額の確定を待たずして示談が成立する可能性があります。一定額での示談が成立すれば、示談金のほかに後から損害賠償などを求められることもありません。
また、交通事故の事件で軽い刑事処分になるためには被害者の許し(宥恕)を得ることが非常に重要になりますが、被害者の感情が強い場合は宥恕を得て示談することが困難になります。そのようなケースでも、弁護士が説明や説得に入ることで相手方から宥恕を得られる可能性が高くなります。
Q 示談は弁護士に任せてしまうべきですか?一緒に行くべきですか?
ひき逃げを含む交通事故の示談では、被害者側の加害者に対する宥恕が非常に大きな意味を持ちますので、刑事裁判で被害者側の処罰意思がないことを示すことができれば、執行猶予付きの判決が得られる可能性が高くなります。
ひき逃げで刑事裁判になっても、判決に執行猶予が付けば、その場で刑務所に行く必要はないので、裁判後は自宅に帰ることが可能です。そのため、実刑判決の場合と比べて、社会復帰がスムーズです。
また、もし裁判中に処罰意思がない旨のサインをもらえなかったとしても、被害者側に対して誠意をもって謝罪し宥恕を得る努力をした事実は、裁判でも一定の評価を受けます。そのため、弁護士に示談を頼む場合でも、交通事故の場合は加害者である当事者自身も一緒になって謝罪や示談交渉をすることがあります。
Q ひき逃げをしてしまった場合、免許取消しの処分を受けますか?
行政処分の前歴がない場合、違反点数15点以上で免許取消しになります。そして、救護義務違反に該当するひき逃げ行為の違反点数は35点ですので、免許は一発で取消しになってしまいます(欠格期間3年)。
なお、死亡事故を起こしてひき逃げした場合は55点(欠格期間7年)、傷害事故を起こしてひき逃げした場合は48点(欠格期間5年)となります。死亡事故の違反点数は20点ですので、ひき逃げが極めて重く扱われていることが分かります。
Q ひき逃げが不起訴になりました。免許取消しを回避することはできますか?
免許の取消しは行政処分(不利益処分)であり、刑事事件とは異なる手続でなされる処分です。そのため、刑事事件が不起訴処分になっても免許取消しになることは理論上あり得ます。もっとも、免許の取り消しを防ぐ活動ができないわけではありません。
まず、不利益処分を行うためには、行政処分に関する意見や証拠書類などを提出し、行政庁に処分の適否を判断してもらう聴聞(行政手続法13条1項1号ロ)という手続が必要になります。この聴聞に際し弁護士が意見書を作成・提出するなどの活動を行うことで、免許の取消しそのものを防げる可能性があります。
また、聴聞の手続きに弁護士がご依頼者と一緒に出向き、弁護士の立ち会いのもとで意見を述べることができます。ひき逃げの刑事事件を担当した弁護士であれば、事件の全体像や不起訴処分となった理由を詳細に把握しているため、意見の陳述や意見書の作成がスムーズです。
また、もし違法な行政処分がなされてしまった場合には、処分の取消訴訟(行政事件訴訟法3条2項)によって、取消しの効果を消滅させることができる可能性があります。運転免許の取消しでお困りの方は、弊所の24時間フリーダイヤル0120-631-276までお電話ください。