ここでは、刑事事件における利益相反とは何かについて見てみましょう。
一般に利益相反とは、ある利益と別の利益とが矛盾・対立して相容れない関係をいうと理解されています。
刑事事件における利益相反とは、たとえば共犯事件において、被告人Aと被告人Bとの利益が矛盾・対立することをいいます。
その場合、弁護人は、被告人A・B両方を同時に弁護することができません。
別の例でいうと、刑事事件における利益相反とは、たとえば弁護人が(民事・刑事を問わず)別の事件を受任している人・会社と、被疑者・被告人との利益が矛盾・対立することをいいまうす。
具体例としては、あなたが職務上の事故を起こして刑事責任を追及されているとします。同時に、あなたの会社も、あなたを社内処分として懲戒することを検討しているとします。
このとき、あなたと会社との間では、潜在的には利益が相反する状態にあります。
したがって、あなたの会社の顧問弁護士は、あなたの刑事事件を弁護することは、利益相反となるのでできません。
なぜなら、あなた個人を弁護しようとすると、会社の懲戒処分からも守らなければならなくなることがあり得ます。
そうなると、弁護士は会社の利益(=あなたを懲戒処分すること)を最大化することができなくなります。
逆に、会社の利益を最大化しようとすると、あなたを懲戒処分することになりますが、それはあなたの利益に反します。
このように、上の事例では、弁護人はあなたか会社かのどちらかの弁護士かすることができないのです。