[質問]
刑事事件で逮捕・勾留、起訴された場合、必ず国選弁護士は付きますか?
[回答]
刑事事件の弁護士は、大きく、私選弁護士と国選弁護士※に分けられます。私選弁護士とは、被疑者・被告人側が自らの費用支出をもって選任するプライベートな弁護士のことを言います。それに対して、国選弁護士とは、国家が被疑者・被告人の権利保護のために選任する弁護士のことを言います。もっとも、国選弁護士が付くのは、一定の要件を満たしたケースに限られます。
逮捕されて起訴が決まるまでの被疑者の段階と、起訴が決まった後の被告人の段階に分けて、国選弁護士が付く要件を説明します。
===被疑者の段階===
【事件の性質】
まず、被疑者の段階で国選の弁護士が付くのは、原則、①法定刑が死刑、無期、長期三年を超える懲役もしくは禁錮に当たり、②勾留状が発せられている事件です。
①の点について、例えば、殺人事件は法定刑が「死刑又は無期若しくは五年以上の懲役」なので、国選の弁護士が付く事件です。窃盗事件も法定刑が「十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」であり、長期が十年の懲役なので、国選弁護対象事件です。
一方で、各都道府県が定める条例に違反する痴漢事件は、平成26年12月現在、いずれの自治体の条例でも長期三年を超える懲役を定めていません。そのため、国選弁護対象事件ではありません。
また、②の通り、勾留状が発せられていることが必要なので、逮捕された直後や逮捕されたものの勾留を請求されず釈放された事件は国選の弁護士が付きません。
【本人の資力】
資力(現金と預金)が50万円以上ある場合は、国選弁護士を付けることはできません。
===被告人の段階===
【事件の性質】
法定刑が死刑、無期、長期三年を超える懲役もしくは禁錮に当たる事件は、必要的弁護事件と呼ばれ、弁護士が付いていないと法廷を開けません。必要的弁護事件で被告人に弁護士が付いていない場合は、裁判所が国選の弁護士を選任します。
【本人の資力】
上記の必要的弁護事件では、本人の資力の有無を問わず、国選の弁護士が付きます。
一方で、必要的弁護事件ではない任意的弁護事件で、被告人が国選弁護士を付けることを望むときは、本人の資力が問われます。被疑者段階と同様、50万円以上持っている場合は、国選弁護士を付けることはできません。
私選弁護士 | 国選弁護士 | |
選任者 | 本人(又は一定の家族) | 国 |
選任時期 | いつでも自由 | 勾留後又は起訴後 |
費用 | 本人が払う | 税金から支払われる※2 |
※1法律上は「弁護人」です。弁護人には、弁護士以外が就くことがありますが、稀なケースなので、ここでは「弁護士」と表記しました。
※2有罪になったときは、原則として、費用の全部または一部を被告人本人が負担しなければなりません。