[質問]
夫が逮捕されたので弁護士を付けたいです。国選の弁護士と私選の弁護士がいると聞きますが、どのような違いがありますか?
[回答]
刑事事件が起訴されるまでの被疑者段階において付けることのできる弁護士には、被疑者国選の弁護士と私選の弁護士がいますが、両者の違いとしては以下の点が挙げられます。
まず、私選の弁護士を付ける事件には限定がないのに対し、被疑者国選制度の対象事件が「死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件」に限られている点です。この対象事件に当たらない場合、私選の弁護士を付けるほかありません。
次に、手続面での違いがあります。被疑者国選による弁護人の選任を請求する場合、資力申告書という書面を提出しなければなりません(刑訴37条の3第1項)。そして、現金や預金などの資産の合計が50万円以上である場合には、裁判所の管轄する区域内の弁護士会に対して、私選弁護人の選任の申出をしなければなりません(同2項)。
資力が50万円以上である人については、この選任申出に基づいて接見した弁護士が拒絶通知を出すなどして受任しなかった場合に、国選弁護人の選任が請求されることになります。
さらに、私選の弁護士が逮捕直後の段階でも付けられるのに対し、国選の弁護士は勾留段階からしか付けられないという点も挙げられます。国選の場合、弁護人が決まるまでに時間のかかるケースもあり、弁護士が付くことのできるタイミングは、私選の方が圧倒的に早いと言えるでしょう。
刑事事件の手続は、厳格な時間制限の中で行われるため、刑事弁護活動は時間との勝負です。また、早く弁護活動に着手すれば、それだけ早く身柄解放される可能性も高まります。ですので、弁護士がスピーディに付くという点は、私選の弁護士のメリットです。加えて、勾留を防ぐための弁護活動は私選の弁護士にしかできません。もし勾留されなければ、逮捕から最長72時間のうちに身柄は解放されることになります。少しでも早い社会復帰を望まれる方にとっては、私選の弁護士を付けるメリットはとても大きいと言えます。