ここでは、刑事事件における没収について見てみましょう。
没収は、判決において主たる刑を言い渡す場合に、これに付加して科せられる刑罰です。
没収が行なわれると、物の所有権が剥奪(はくだつ)され、国庫に帰属することとなります。
没収は、以下のような物について行なわれます。
◆その存在が犯罪行為の不可欠な要素となっている物
偽造文書行使罪における偽造文書、賄賂罪における賄賂、わいせつ物頒布・陳列罪におけるわいせつ物など。
◆犯罪行為の用に供した物、または供しようとした物
殺人に用いられた銃と弾丸、賭博で使われたカードやサイコロ、麻雀牌、文書偽造罪で使われた偽造のハンコなど。
◆犯罪行為によって生じた物、犯罪行為によって得た物、犯罪行為の報酬として得た物、またはこれらの物の対価として得た物
(生じた物)通貨偽造罪における偽造通貨、文書偽造罪における偽造文書
(得た物)恐喝によって得た誓約書や契約書、有償で譲り受けた盗品
(報酬として得た物)幇助の報酬金、売春業者に建物を提供した場合の家賃
(対価として得た物)窃盗罪において、盗まれた現金によって購入された物
没収するかどうかは、基本的には裁判所の裁量にゆだねられています。
ただし、賄賂事件の犯人または情を知った第三者が収受した賄賂は、かならず没収されます。
そのほかにも、特別法においてかならず没収すべきものと定められている場合もあります。