よくある刑事弁護士への相談の例
「電話番号が変わった」のオレオレ詐欺で検挙された。
一人暮らしをしている息子が、オレオレ詐欺の「かけ子」をしたという容疑で、警察に逮捕されました。
昨日、捜査を担当している警察署から電話があって知らされました。その時はあまり現実味がありませんでした。しかしその晩、当番弁護士として息子と接見してきたという弁護士の先生からも電話があり、これはいよいよ本当のことかと実感しました。
当番弁護士の先生によると、息子はオレオレ詐欺のグループの一員として一網打尽に遭ったようです。息子の役割は、相手の子供の名前などを名乗って電話をかける、いわゆる「かけ子」だと聞きました。
弁護士先生が息子から聞いたところでは、息子のグループの手口は、振り込みをお願いする電話より前の日に、息子や孫になりすまして「電話番号が変わった」と電話をしておくのだそうです。その段階で、相手が息子や孫だと信じ込んでいるようなら、後日、振り込みをお願いする電話をかける。他方で、相手が信じ込んでいないようなら、そこで電話を切るのだそうです。
今回逮捕されたのは、被害額が200万円の事件だと聞きました。ただ、息子はこれまでに1000万円近くの報酬をもらっているようです。この報酬の額からすると、余罪が相当にありそうだ、その余罪が発覚したら身柄拘束はもっと長引くと弁護士先生は言っていました。
私もそろそろ高齢になるので、息子が高齢者を狙いうちにしてお金を騙し取るという卑劣な行いをしていたなんて、わが子といえども許せません。
しかし、息子を守ってやれるのは親しかいないので、更生させてやりたいとも思います。今後は、息子をわが家に戻ってこさせて、日々の行いを監督していきたいと思っています。また当然、被害弁償にもできる限り協力してゆくつもりです。
刑事弁護士からの一行回答
刑事弁護士に事件を相談すれば、今回のオレオレ詐欺事件に関して、ご子息に対する刑事手続の流れや、今後の刑事処分の見込みを知ることができます。
振り込め詐欺事件は、その事案の性質上、刑事事件の流れが複雑で、長期化する傾向があります。再逮捕が繰り返される可能性が高いためです。
振り込め詐欺の電話役は、通称「かけ子」と呼ばれます。かけ子には詐欺罪が成立し、振り込め詐欺に関与した「かけ子」は、基本的には実刑(刑務所行き)になります。
起訴された事件に関与した期間が2,3日と少ないとか、結果(金銭的実害)が生じておらず未遂ばかりであるとか、犯行時は少年でかつ先輩から脅されて電話をかけていたとか、その上で被害弁償がすべて済んでいるなど、何らかの特別な事情がある場合は、執行猶予になるケースもあります。
本件の場合は、「これまでに1000万円近くの報酬をもらっている」ということですので、「詐欺組織に深く関与していた」と裁判官に認定されるおそれがあります。最終的に証拠が固まって起訴される事件の数や内容にもよりますが、基本的には、すべての被害者と示談が成立したとしても、執行猶予になるのは難しいかもしれません。
ただ、それでも刑を軽くするためには、被害弁償を尽くしていくことが大切です。また、被害弁償が済み、詐欺の被害者と示談が成立すれば、将来的に民事裁判を起こされることもありません。