よくある刑事弁護士への相談の例
ATM破りで渋谷警察署に逮捕された。
深夜、銀行の無人店舗に侵入して、重機でATMを壊して現金を奪ったのがばれて、警察に逮捕されました。
きっかけは、不良グループの先輩から「効率よく稼げるヤマがあるんだけど、お前もどう?」と誘われて、窃盗団に加わるようになったことです。車上盗や事務所荒らしなど、手広くやってきました。ATM破りは、重機が必要になるなどで大がかりなヤマなので、これまでは手がけてきませんでした。
しかし先日、ついに重機を手配できる段取りになったので、ATM破りを決行することになったのです。場所は、重機を使った大がかりな作業をしても、すぐには警察が駆けつけない地域を選ぶ必要があります。いろいろとリサーチした結果、渋谷区の某地域を選びました。
私はリーダー格ではないものの、調査と店舗の選択を担当しました。
当日、某地域の某銀行の無人店舗の前に集結しました。通常、深夜に店舗の中に忍び込もうとしても、センサーが作動して警備員に通報されてしまいます。重機が手に入ったところでもあるので、正面突破で、重機のアームで店舗の扉ごと吹っ飛ばすことにしました。
そうして店舗内に入ると、次は本丸のATMです。これも、どこをどうすれば現金収納部分が表れるか事前に調査して、手順を考えてありました。その手順どおりにアームでこじ開けたところ、現金が現れました。それをアームで拾ってトラックに回収し、我々は一目散にその場を逃げ去りました。
この間、私はトラックの運転を担当しました。
ひとまず安全な場所まで逃げた後、報酬を山分けしました。全部で450万円近くあり、私は100万円を受け取りました。それでグループはいったん解散し、次のヤマまで連絡を待つことになりました。
ところが、1週間もしたころ、突然警察に取り囲まれて、逮捕されました。グループの一員が捕まり、そこから芋づる式に逮捕されたようです。ほかの仲間がどう話しているのかわからないので、いまは黙秘しています。私選弁護士に事件を依頼すれば、どのような活動ができますか?
刑事弁護士からの一行回答
私選の刑事弁護士を立てて対応すれば、渋谷警察署管内でATM破りをしたご相談者の事件に関して、様々な弁護活動を受けることができます。
私選の刑事弁護士(私選弁護人)の活動の方向性を決めるのは、依頼者の意思です。もちろん、依頼者が違法な証拠隠滅や証人威迫を希望した場合は、たとえ私選弁護人であっても、これをサポートすることはできません。ただ、違法な依頼でなければ、社会一般的に見て「反省していない」と思われるような依頼でも、刑事弁護人はサポートしていくことになります。なぜなら、社会一般の倫理と、刑事弁護人に課せられた職業倫理は異なるからです。
例えば、社会一般的には、真犯人の被疑者が「黙秘したい」と言っていたら、「犯人が黙秘したいとは、けしからん!」ということになるでしょう。ただ、刑事弁護人の場合は、被疑者の「黙秘したい」という意思を尊重して、黙秘権の行使をサポートしなければなりません。これが日本国憲法に定められた被疑者・被告人の権利であり、刑事弁護人の役割だからです。
本件の場合は、まず問題となるのは、ご相談者がどうなりたいかです。「窃盗団から足を洗って人生をやり直したいのか」「仲間のことを話してもいいのか、嫌なのか」「刑務所にさえ入らなければ、それ以外は大丈夫なのか」「被害弁償はするつもりなのか、全員でするつもりなのか、周りはしなくても自分一人でもするつもりなのか」等、色々な要素を決める必要があります。
弁護士のサポートは、ご相談者が決めた目標を実現するためのお手伝いに過ぎません。ご相談者が反省して示談をしたいというのであれば、弁護士を通じて示談交渉を進めることができますし、早く留置場から出たいというのであれば、弁護士を通じて保釈申請の手続きを進めることができます。