本ページでは、「死亡診断書を偽造することは犯罪(刑事事件)になるか、どのような犯罪に問われる可能性があるのか」について解説しています。
Q 医師が死亡診断書に虚偽の診断内容を記載した場合は?
刑法上、医師が公務所に提出すべき死亡診断書に虚偽の記載をした場合、虚偽死亡証書作成罪が成立します。公務所とは、官公庁その他の組織体をいいます。
そのため、診察をした医師が公務所に提出すべき死亡診断書に虚偽の記載をしたときは、名義を偽っていなくても犯罪となるのです。法定刑は、3年以下の禁固または30万円以下の罰金です。
Q 医師の資格を持たない者が、実在する医師の名義で死亡診断書を作成した場合は?
無資格者が、実在する医師の名義を偽って死亡診断書を作成する行為には、有印私文書偽造罪が成立します。法定刑は3月以上5年以下の懲役となります。
医師の資格を持っている場合でも、自分とは別の医師の名義で死亡診断書を作成した場合には、同様に有印私文書偽造罪が成立します。
Q 医師の資格を持たない者が、架空の医師の名義で死亡診断書を作成した場合は?
実在しない架空の医師の名義で死亡診断書を作成する行為についても、同様に有印私文書偽造罪が成立します。
架空の人物であれば、他人の名義を冒用していないのではないかとの疑問が生じます。しかし、判例上、一般人からみて真正な死亡診断書が作成されたと誤解するおそれがあれば、文書偽造に当たるとされているのです。
Q 医師の資格を持たない者が、自分の名前に医師の肩書をつけた死亡診断書を作成した場合は?
無資格者が、自己の名前に医師の肩書をつけて死亡診断書を作成する場合にも、有印私文書偽造罪が成立する可能性があります。
たとえば、Aという人物が「医師A」という名義で死亡診断書を作成した場合がこれにあたります。
診断書の性質上、作成者に医師の資格があることが当然に予定されています。そのため、無資格者が自分の名前に医師の肩書をつける行為は、架空人名義の文書を偽造した場合と同視される可能性があるのです。
自分の名義で署名しているのだから、私文書偽造罪が成立しないと誤解しないように注意が必要です。
Q すでに正式に作成された死亡診断書の内容に改変を加えた場合は?
医師名義で正式に作成された死亡診断書について、作成者以外が内容に改変を加える行為には、有印私文書変造罪が成立します。法定刑は3月以上5年以下の懲役となります。
Q 無資格者が死亡診断書の作成や変造を行うことと医師法との関係は?
医師法上、医師以外の者が医業を行うことはできません。これに違反した場合3年以下の懲役または100万円以下の罰金の法定刑となります。
医業とは、「反復継続の意思で人の疾病の治療を目的に診察治療をなす行為」をいいます(東京高判昭和36年12月13日)。
死亡診断書の作成行為は医療行為に含まれる可能性が高いといえますが、反復継続する意思なく死亡診断書を作成・変造する場合には医業には当たりません。この場合には有印私文書偽造の刑事責任のみを負うにとどまります。