ここでは、刑事事件で証拠の原本はどのように扱われるかについて見てみましょう。
刑事訴訟法上、証拠書類や証拠物について証拠調べが終わった場合には、遅滞なく、これらを裁判所に提出することとされています。
これは、取り調べ済みの証拠を保存するため、事件が終結するまでこれを裁判所の保管のもとに置くこととしたものです。
これはまた、裁判官が交代して弁論が更新された場合や、上訴審で審査される場合に必要だからでもあります。
提出された証拠書類は、訴訟記録に綴られます。
他方、証拠物については、裁判所があらためて領置の決定をしない限り、その証拠物はその取り調べを請求した者に返還されることになります。
したがって、捜査機関がすでに押収を済ませた証拠物であっても、裁判所がこれを自ら保管するためには、あらためて裁判所において領置する旨の決定が必要なのです。
そして、裁判所によって領置が行なわれたときは、捜査機関による押収は、当然に効力を失い、その後は裁判所によって押収された状態が続くことになります。