刑事裁判では、証拠調べを行ないます。
証拠調べの際、検察官・弁護人それぞれから、証拠の取り調べを請求できます。
検察官が取調べを請求する証拠には、甲号証と乙号証とがあります。
ここでは、乙号証とは何かについて見てみましょう。
乙号証は、以下の書類から成ります。
(1)被告人の供述調書
(2)被告人の身上関係書類(戸籍、住民票など)
(3)被告人の前科関係の書類(前科調書、犯罪歴の照会回答書)
などです。
つまり、被告人に関する証拠は、すべて乙号証とされるのです。
刑事訴訟法上、乙号証のうち被告人の自白調書は、甲号証など犯罪事実に関する他の証拠の取り調べが終わった後でなければ、取り調べを請求できないとされています。
これは、憲法上、被告人を有罪とするには自白だけでは足りず、補強証拠まで必要であるとされていることを、証拠調べの順序にも反映させたものです。
もっとも実際の運用では、全部自白事件においては、甲号証と乙号証との両方を同時に請求し、裁判所も被告人側が全部に同意している時は一括して採用し、取り調べだけを甲号証から乙号証にかけて順次行なってゆく、という扱いがされています。